フルタニランバー株式会社
コラム「森のフルタニさん」
人材開発支援助成金とは?申請方法や概要を紹介
投稿日:2022.07.01/更新日:2022.07.01
企業の成長のために人材は欠かせない存在ですが、人件費の高騰などを理由として採用に踏み切れないケースも少なくありません。
特に実務経験が乏しい若年層の場合、入社後にはさまざまな研修・教育をしなければならず、採用に躊躇してしまう企業もあります。
そのようなときにぜひ活用してほしいのが、人材開発支援助成金です。
今回の記事では、人材開発支援助成金の種類や内容、必要書類や申請の手順もあわせて紹介します。
Contents
人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金とは、事業主が社員に対して職務上必要な専門的な知識やスキルを習得させるために、職業訓練などを計画に沿って実施した場合、訓練期間中に生じる賃金の一部を事業主に対して助成する制度のことです。
人材を採用した場合、十分な知識やスキルがあり実務経験も豊富な社員の場合は即戦力として活躍できますが、そうでない社員には一定期間の研修が必要です。
しかし、社員として採用している以上、企業は研修期間中であっても賃金を支払わなければなりません。
財務的に余裕がない企業の場合、十分な研修ができないと採用が抑制されることもあり、競争力が低下してしまいます。
そこで、採用活動を活発化するとともに社員のスキルアップを支援し、中小企業の競争力を支援するために人材開発支援助成金を支給しています。
人材開発支援助成金の種類とその内容
一口に人材開発支援助成金といってもさまざまなコースが用意されており、求められる要件も異なります。7つのコースの基本要件と訓練対象者を解説しましょう。
特定訓練コース
特定訓練コースとは、新卒社員や若年層に対しOFF-JTにより行われる訓練や、OJTとOFF-JTを組み合わせて実施する訓練を対象としたものです。
具体的には「労働生産性向上訓練」、「若年人材育成訓練」、「熟練技能育成・承継訓練」、「認定実習併用職業訓練」があり、10時間以上の実訓練時間数であることが要件として定められています。
特定訓練コースの助成金額および助成率は以下の通りです。
|
経費助成 |
賃金助成 (1時間あたり) |
OJT実施助成 |
OFF-JT |
45% (中小企業以外は30%) |
760円 (中小企業以外は380円) |
– |
OJT |
– |
– |
20万円 (中小企業以外は11万円) |
生産性要求を満たす場合 |
60% (中小企業以外は45%) |
960円 (中小企業以外は480円) |
25万円 (中小企業以外は14万円) |
また、実訓練時間数によっても助成金額は異なり、中小企業事業主の場合は50万円、それ以外の事業主は30万円が上限額となります。
一般訓練コース
一般訓練コースは、実訓練時間数が20時間以上でOFF-JTにより実施される訓練に対して支給されます。
なお、OFF-JTは自社で行う「事業内訓練」だけでなく社外の教育訓練機関などで受講する「事業外訓練」も対象となります。
一般訓練コースの場合、OJTは助成対象とはなりません。
経費助成 | 賃金助成
(1時間あたり) |
|
OFF-JT | 30% | 380円 |
生産性要求を満たす場合 | 45% | 480円 |
一般訓練コースの上限額は20万円となっています。
教育訓練休暇付与コース
教育訓練休暇付与コースでは、以下の3つの制度が用意されています。
種類 | 概要 | 賃金助成金額 | 経費助成金額 |
教育訓練休暇制度 | 3年間で5日以上取得できる教育訓練休暇を導入・適用した場合に助成 | 30万円(生産性要求を満たす場合36万円) | |
長期教育訓練休暇制度 | 30日以上の長期教育訓練休暇制度を導入・適用した場合に助成 | 6,000円(生産性要求を満たす場合7,200円) | 20万円(生産性要求を満たす場合24万円) |
教育訓練短時間勤務等制度 | 30回以上の所定労働時間の短縮または時短勤務が可能な制度を導入・適用した場合に助成 | 20万円(生産性要求を満たす場合24万円) |
上記のうち、長期教育訓練休暇制度の賃金助成は最大150日分が上限となります。
特別育成訓練コース
特別育成訓練コースでは、パートやアルバイトなどから契約社員・正社員への転換を進めるために、OFF-JTやOJTにより実施される訓練に対して支給されます。
経費助成 | 賃金助成
(1時間あたり) |
経費助成
(正社員化した場合) |
経費助成
(非正規雇用を維持した場合) |
|
OFF-JT | 70% | 760円
(大企業の場合は475円) |
70% | 60% |
OJT | 10万円
(大企業の場合は9万円) |
– | – | – |
経費助成金額の上限は1人あたり50万円(大企業の場合は30万円)となります。
建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースでは、建設関連の認定職業訓練または指導員訓練を実施した場合に、対象経費の6分の1が助成されます。
また、社員に対して認定訓練を受講させた中小企業に対しては、1人1日あたり3,800円が助成されます。
建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースでは、新卒社員をはじめとして若年層の育成を図るためにキャリアに応じたOJTやOFF-JTを実施した場合に、対象経費の4分の3、賃金は1人1日あたり8,550円が助成されます。
社員数が21人以上の中小建設事業主は対象経費の10分の7、賃金は7,600円の助成となります。
障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースは、障害者の雇用を促進するために、教育訓練を実施する施設の設置・運営をしている事業主に対して費用の一部を助成するものです。
設備の設置や整備にかかった費用の4分の3が助成され、上限は5,000万円(設備の更新については1,000万円)となります。
人材開発支援助成金のメリット・デメリット
さまざまなコースが用意されている人材開発支援助成金ですが、本制度を企業が活用することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
また、反対にデメリットとして押さえておきたいポイントも紹介します。
人材開発支援助成金のメリット
人材開発支援助成金の最大のメリットは、人材育成にかかわるコストが軽減される点にあります。
人手不足に悩んでいるものの、採用しても人材教育に割ける金銭的な余裕がないことから、採用自体を諦めてしまう企業も少なくありません。
しかし、それでは人手不足の課題は解決できず、企業として競争力を維持できなくなり業績悪化を招くことも。
そこで、人材開発支援助成金を活用することで採用後の人材育成にかかる一時的なコストを軽減でき、生産性を向上させ競争力が確保できます。
また、既存の社員に対しても企業としてさまざまなスキルアップの支援が可能となり、社員一人ひとりのキャリアアップ意識を定着できるでしょう。
人材開発支援助成金のデメリット
人材開発支援助成金のデメリットとして挙げられるのは、申請に手間と時間がかかることです。
OJTやOFF-JTなどの訓練の前後にさまざまな申請書類を提出しなければならず、申請後も所轄の労働局の審査があるため時間を要します。
人材開発支援助成金の申請の流れと必要書類
人材開発支援助成金の申請にあたって必要な書類と基本的なフローは以下の通りです。
申請の流れ
1.労働局へ必要書類の提出
訓練開始日の1ヶ月前までに以下の必要書類を揃えたうえで記入し、各都道府県の労働局へ提出します。
・人材開発支援助成金 訓練実施計画届(訓練様式第1号)
・資本金または出資総額、企業全体の常時雇用する労働者数が分かる書類(登記簿謄本の写し、パンフレットなど)
・年間職業能力開発計画(訓練様式第3-1号)
・訓練別の対象者一覧(訓練様式第4号)
・対象者の雇用契約書等の写し
・人材開発支援助成金 事前確認書(訓練様式第11号)
・訓練実施内容が記載された書類
2.訓練の実施
労働局へ提出した書類に記載された訓練計画に沿ってカリキュラムを実施します。
3.支給の申請
訓練が終了してから2ヶ月以内に以下の必要書類を揃えたうえで記入し、各都道府県の労働局へ提出します。
・支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
・支払方法・受取人住所届
・支給申請書(訓練様式第5号)
・賃金助成及び実施助成の内訳(訓練様式第6-1号)
・経費助成の内訳(訓練様式7-1号)
・OFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号)
・OJT実施状況報告書(様式第9-1号)
・訓練を行う者が不正受給に関与していた場合に連帯債務を負うこと等についての承諾書(訓練様式第13号)
・訓練期間中の出勤状況・出退勤時刻を確認するための書類(出勤簿、タイムカードなど)
・受講者に対して訓練期間中の賃金が支払われていたことを確認するための書類(賃金台帳など)
・事業主が訓練費用を負担していることを確認するための書類(領収書など)
・訓練に使用した教材の目次等の写し
・該当する対象訓練で発行された修了証や、使用したジョブ・カード
人材開発支援助成金の令和4年の変更点
人材開発支援助成金は毎年定期的に制度の見直しがされており、令和4年のタイミングでは以下の点が変更となりました。
共通の見直し
・訓練施設の要件の変更
・訓練講師の要件の変更
特定訓練コースの見直し
・OJTの助成額変更など
・対象訓練の統廃合
・「若年人材育成訓練」の対象労働者の変更
特別育成訓練コースの見直し
・OJTの助成額変更など
・助成対象訓練の変更
・計画届提出時の書類の変更
人材開発支援助成金を申請する注意点
人材開発支援助成金の申請にあたっては、いくつかの注意点があり、これらを把握しておかないと支給要件から漏れてしまう可能性もあります。
・訓練の内容を途中で変更する場合は「計画変更届」を提出する
・訓練にかかった経費は支給申請日までに支払い終えていること(領収書の提出が必要のため)
・OJT実施状況報告書は、実施日を含めて訓練受講者が手書きで記入する
・訓練の受講時間数が実訓練時間数の8割以上であること
人材開発支援助成金を活用し事業の持続的な成長につなげよう
人材開発支援助成金は、新たな社員を採用したくても教育コストを捻出できないと悩む企業にとって有効な制度です。
社員の賃金はもちろんのこと、教育にかかる経費も含めて助成対象とすることができるため、まずは自社の状況と照らし合わせながらどの程度の助成金が受け取れるのかを確認してみましょう。