フルタニランバー株式会社
コラム「森のフルタニさん」
杉(スギ)材の木材としての特徴やメリット|ヒノキ材との違いは?
投稿日:2022.10.04/更新日:2023.09.26
まっすぐに伸びた幹と、大きいものは数十メートルにまで達する杉(スギ)は、日本だけに自生する固有の品種です。
杉(スギ)は古くから日本のまちづくりや人々の生活を支えてきたといっても過言ではなく、現在でもさまざまな場面で利用されています。
本記事では、日本の代表的な木材である杉(スギ)材の特徴を紹介するとともに、日本のなかでも特に有名な杉(スギ)の産地についても詳しく解説します。
Contents
杉(スギ)材の特徴
日本各地に数多く群生している固有種「杉(スギ)」は、室町時代から植林されてきた歴史があり、ほとんどが人口的に造成されたものです。
一方で、自然環境のなかで自生し、数百年といった歳月をかけて育ってきた天然のスギ(杉)も少なくありません。
本州から九州地方まで幅広く分布し寒さにも強く、東北地方の一部や鹿児島県屋久島は天然スギ(杉)の産地としても有名であり、高値で取引されています。
杉(スギ)は地面から垂直にまっすぐ成長する特性があります。
そのため、木材として加工した際に直線的な木目が現れ、見た目も美しいことから建具に多く利用されてきました。
また、木目が直線的ということは加工がしやすく、加えて通気性や防水性が高い性質ももっているため、古くは酒樽や造船の原料としても使用されてきたのです。
ヒノキと杉(スギ)の違い
杉(スギ)と似た見た目の樹木にヒノキがあります。
ヒノキは独特の香りがあり、建材や家具として使用した際に室内が木の香りに包まれ、癒やしの効果を与えてくれます。
これに対し杉(スギ)はヒノキほど香りは強くありません。
直線的な木目は両者に共通して見られるポイントですが、ヒノキのほうがキメが細かくツヤが見られます。
また、重量もヒノキのほうが重く、硬い傾向があります。
杉(スギ)材を使用するメリット・デメリット
杉(スギ)材は日本国内で生産される木材のなかでもメジャーな存在ですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。
また、反対にデメリットとして考えられるポイントも紹介します。
メリット
杉(スギ)材の主なメリットは以下の3点です。
①容易に入手できる
杉(スギ)は室町時代から植林が行われてきたと紹介しましたが、そのような歴史もあり日本国内での植林面積は圧倒的ナンバーワンを誇っています。
海外からの輸入に頼らずとも日本国内で安定供給できる貴重な木材であり、容易に入手できるのが魅力のひとつといえるでしょう。
②軽量で扱いやすい
杉(スギ)の内部には空気が含まれており、木材のなかでも軽量な特徴があります。
軽いということは建材や家具などに加工する際に扱いやすいことも意味しており、実際に家屋のさまざまな部分に杉(スギ)材が使われることがあります。
また、空気を含んでいることで木目に触れた際に温かみが感じられるのも大きなメリットといえるでしょう。
③経年変化が楽しめる
杉(スギ)は空気に触れることで徐々に酸化していき、経年変化として現れるようになります。
木目や年輪の色が徐々に濃くなっていくため、建具や家具などに使用することで味わい深い風合いが楽しめるようになるでしょう。
デメリット
杉(スギ)材のデメリットとして挙げられるのは以下の2点です。
①傷がつきやすい
杉(スギ)材はヒノキなどに比べて柔らかいことから、使用していくなかで傷がつきやすい性質があります。
小キズも経年変化の一部ととらえ、味わい深い風合いとして楽しめる見方もありますが、神経質な方にとってはデメリットの一つといえるでしょう。
②アレルギーの原因になることも
杉(スギ)花粉は花粉症の代表的な原因物質としても知られていますが、木材としての杉(スギ)材は花粉の影響を受けることはありません。
ただし、花粉ではなく木材としての杉(スギ)にアレルギー反応を引き起こす方も存在します。
杉(スギ)材に囲まれて生活していくうちにアレルギー反応が現れることもあるため注意が必要です。
杉(スギ)材の使用用途
杉(スギ)材は私たち日本人にとってなじみの深い木材として知られていますが、具体的にどういった用途があるのでしょうか。
代表的なものをいくつか紹介しましょう。
①建材
柱や梁など、建物の骨格となる重要な部分において、杉(スギ)材が用いられることがあります。
②内装材
内装材とは、床材や天井板、羽目板などが代表的です。
手で触れたり目に入ったりすることが多いため、比較的柔らかく手触りの良い杉(スギ)材が適しています。
③家具
タンスやダイニングテーブル、椅子などの家具にも杉(スギ)材は多く用いられます。
内装材よりも手に触れることが多いため、杉(スギ)材でできた家具は木の温もりが感じられる温かい印象を与えてくれます。
④割り箸
建材や内装材、家具などに使用する際に余った端材は、割り箸の原料となることもあります。
繊維がまっすぐで割れやすいことや、適度な木の香りが楽しめることから、杉(スギ)材は割り箸の原料に最適です。
フローリングで杉(スギ)の無垢材が人気な理由
杉(スギ)材が用いられる傾向が高いものに内装材がありますが、そのなかでも特に需要が高いのがフローリング材(床材)です。
フローリングの素材や手触りは住む人の快適性を左右しますが、数ある木材のなかでも杉(スギ)材は空気の含有量が多く温かみがあり、適度な柔らかさも持ち合わせています。
そのため、杉(スギ)の無垢材はフローリング用の素材として最適であり、上質な住空間を実現します。
また、床一面に杉(スギ)の無垢材を敷き詰めることで、独特の香りも楽しめることも人気の理由のひとつとなっています。
杉(スギ)材の価格相場
数ある木材のなかでも杉(スギ)材は比較的入手しやすく、価格も安価な傾向があります。
しかし、2020年以降、新型コロナウイルス感染症の拡大やロシア・ウクライナ情勢の変化、急激な円高などの影響によって輸入木材が高騰する「ウッドショック」が発生しました。
その影響は国産木材にも及んでおり、安価に入手できていた杉(スギ)材も価格相場が上昇しています。
たとえば、長さ3.65メートル、幅9センチメートル程度のスギ材は1枚あたり約300円となっており、これはウッドショックに陥る前に比べて4割以上の上昇となっています。
ウッドショックは当初、新型コロナウイルス感染症が終息することで落ち着くと見られていましたが、現在は世界情勢の変化や円安といった要因が立て続けに発生していることから、価格がもとの水準まで戻る見込みは不明となっているのが現状です。
日本を代表をする杉(スギ)産地5選
ウッドショックによって輸入木材が高騰していることから、比較的値上がり幅の少ない国産木材に回帰する動きも出てきています。
では、良質な杉(スギ)材を仕入れるためにはどの産地のものを選べば良いのでしょうか。日本のなかで代表的な杉(スギ)の産地を5つ紹介します。
①秋田県 秋田杉(東北)
秋田は杉(スギ)の一大産地として有名であり、「秋田杉」の名称でも親しまれています。
植林によって育てられた「秋田杉」と、自然環境のなかで育った「天然秋田杉」があり、特に天然秋田杉は木目が細かく美しいことから高値で取引されています。
②東京都 多摩杉 (関東)
意外なことに東京都も杉の産地として知られており、多摩地域で生産されたものは「多摩杉」とよばれています。
古くは江戸のまちづくりにも使われた歴史があり、現在においても公共施設や商業施設、交通機関、住宅まで幅広く活用されています。
③静岡県 天竜杉(東海)
静岡県浜松市の天竜区とよばれる地域で生産された杉(スギ)材を「天竜杉」とよびます。
傾斜があり日当たりが良好で、温暖な気候でもあることから成長が早く、曲がりの少ない真っ直ぐに伸びたスギ材ができます。
④奈良県 吉野杉(近畿)
奈良県にある吉野林業地帯とよばれる地域で生産された杉(スギ)材を「吉野杉」とよびます。
室町時代から長年にわたって受け継がれてきた造林技術によって、ゆっくりとした成長をさせるのが吉野杉の特徴。木目がきめ細かく、まっすぐに伸びた耐久性の高いスギ(杉)材が完成します。
⑤宮崎県 飫肥杉(九州)
宮崎県日南市一帯で生産された杉(スギ)材を「飫肥杉(おびすぎ)」とよびます。
飫肥杉には油分の含有量が多いことから耐水性が高く、木造船の原料として使用されてきた歴史があります。
その後、1900年代半ばになると造船の需要が低下したことから、現在に至るまで建材用に多く用いられるようになりました。
フルタ二ランバーでの杉(スギ)材の取り扱い
当社では全国各地のネットワークにより各地域産材を産地証明付きでご準備いたします。
またフルタニランバーの所在地である石川県も杉の産地として知られており、南加賀地域で生産された杉は「加賀杉」ともよばれています。
石川県の県木は能登ヒバですが森林面積は杉のほうが多く、その中でも加賀地方の加賀杉は木材そのものの柔軟性・粘り性が高く、赤みがかった木目は独特の美しい風合いを醸し出しています。
公共施設や一般住宅にも加賀杉は多く採用されており、質の高い木材として高い需要を誇っています。
石川県産材の加賀杉も産地証明とともにご準備出来ますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
日本固有の品種である杉(スギ)は、長い歴史のなかで人々の生活を支えてきました。
現在では海外からさまざまな輸入木材も手に入れられるようになりましたが、杉(スギ)独特の香りや木目の風合い、木の温もりなどに魅力を感じ、あえて国産木材にこだわる人も少なくありません。
東北から九州地方まで、さまざまな土地にブランド杉は存在し、それぞれ違った特徴や個性が見られます。
ウッドショックによって輸入木材が高騰している今だからこそ、あらためて国産木材にフォーカスしてみるのも良いのではないでしょうか。