紙木材
提供企業:中庄株式会社
CrossTalkクロストーク
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刑部 渉WATARU GYOBU
中庄株式会社
ソリューションデザイン部 部長 -
古谷 隆明TAKAAKI FURUYA
フルタニランバー株式会社
代表取締役
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「 中庄について 」
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会社紹介
中庄は1783年に創業した紙の専門卸商社です。
元々は和紙等を取り扱う小売店からスタートしました。
現在は洋紙と呼ばれる出版用紙、印刷用紙などを出版会社や印刷会社へ届ける仕事、あとは家庭紙と呼ばれるティシュ、トイレットペーパーなどをスーパーやドラッグストアに届ける仕事をしています。届ける紙については自社で作っているわけではなく、メーカーが作った紙を必要な先に届ける仕事です。 -
力をいれている事業はありますか??
今後も紙の事業をメインで考えていきたいのですが、先ほどもお話した通り、中庄は物作りをしている会社ではありません。これまで流通がメインの会社だったので、会社として何かを打ち出すということは明確にできていませんでした。僕はそれがもったいないなと思っていたので、「紙の魅力を伝える」というコンセプトをプランニングし、HPのリニューアルやSNSを始めました。それをきっかけに絵の具やダンボールなどの身近な素材を使って子供たちと巨大絵本とか立体空間を作るプロジェクトを主催したり、地域企業や行政とコラボしたアートイベントなどの企画も手がけている「アトリエヤマダ」とつながり、昨年4月から紙の魅力を再発見するプロジェクト「紙の遊園地」をはじめました。
紙の遊園地については下記URL参照
https://note.com/mirakurubu/n/ne2a3d64bec59 -
紙の業界が抱えている課題は?
大きく分けて3つあげられます。
1つは、自然の資源を活用している点。2つ目は、紙自体はメーカーが作っているという点において在庫や価格をコントロールすることが非常に難しい点。最後に、紙需要の減少が3点目となり、非常に大きな課題ですね。
例えば、本の産業規模が2兆円だったものが、今では1兆円を割っています。使われる紙の量も以前の半分以下になってしまいました。
企業さんの広告などもスマホなどの電子広告が主流となってしまい「最近新聞や雑誌を買われましたか?」というようなことも起きていますし、「チラシを刷って配るのは非効率」となりがちです。トイレットペーパーなどの紙製品も、国内需要の大幅な伸びは期待できなくなりました。人口は減るけどトイレに行く回数は増えるということは考えられないためです。このように紙の使用量は減少の一途を辿っており、その影響によって紙が売れても利益が出ない、仮に売れるタイミングがあっても在庫がないといった2重苦3重苦の課題を抱えています。 -
CSRもしくは環境への取組は何か行っていますか?
紙の遊園地プロジェクトの中で、沢山の紙と企業さんから提供いただいた面白い形の端材や廃材使ったカタチを目指さない図工室「chokipetasu-チョキぺタス-」【※以後チョキぺタス】というものを実施しています。環境への取組みを意識してスタートしたわけではないですが、余った紙や廃材を活用しているという点でいくつかの企業さんや自治体さんからは「SDGsですね!」とお声がけいただくことがあります。あくまでも遊園地なので子どもたちが楽しみにながら、端材や廃材を通して企業さんのことや環境問題のことを考えるきっかけにもなればいいかなと思っています。
また、その他にもマイクロプラスチックなどの環境問題への対応として、石灰石や廃棄米などを利用した代替素材の流通拡大を視野に活動を始めています。紙という素材や商品を扱う一企業として、様々な素材の可能性を探っていく取組を考えています。
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木との親和性について
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木についてのイメージを教えてください。話を聞く前や聞いた後の変化など。
紙と同様に暮らしの身近にある存在で、とても親しみを感じる素材のひとつです。
紙の生産に木材チップが欠かせないこともその理由の一つではあります。最近は製紙メーカーでも森林でのフィールドワークを開催するなど、木への関心度を高める取組を見かけるようになりました。
木も紙も、我々の今の生活には欠かせないもので、素材そのものの価値もありますが、「温もり」や「柔らかさ」といった五感に必要な素材だと実感しています。そうは思っていても、木材は「紙」や「建材」や「家具」のような産業用途という認識でもあります。
ですが、生産の現場がどのような状況になっているのかなどまでは理解していませんでした。担い手不足の問題や間伐材の利活用問題など古谷さんのお話をお伺いして、目に見えない部分でかなりの課題が山積しているような状況を知りました。漠然と木を切ることが悪いことのように思われてしまっているというのはおっしゃる通りで、紙も同様の認識を持たれることが多いのです。事実は、その逆なんですけどね。 -
これまでヒアリングを重ねた木材業界が置かれている課題(環境問題・林業関係者の担い手不足・地域材利用の必要性・非建築分野や身の回りの製品の木質化・木はサイクルバランスが重要など)について御社の業界課題との共通点や取組の協力姿勢などのコメントお願いします。
紙業界もそうですが、実際にそこに関わっている人たちの現状や、存在が知られていないというのが悲しいですね。課題や状態が表面化していれば解決の使用もあるかもしれませんが、知られていないとどうしよもない。だからこそ、私も紙屋という存在を知ってもらうために情報発信を強化していきました。
木材の伐採量が少なくなることは紙の生産にも影響してくることだと思います。紙の原料になる木材チップのほとんどは海外の輸入材ですが、消費の冷え込みを考えると、これからは地域毎に「これを使って町興ししよう」という素材の一つとして打ち出せる価値を作ることも大事です。そうすることで林業に就くことに誇りを感じる世代を増やしていく必要があるのかもしれません。それは紙業界においても同様のことだと思います。
そのためにも今回の対談もそうですが、自分たちだけでは現状を打破するのは難しいと考えています。全くの異業界、異業種とタッグを組むことで全く違った考え方やアイディアを生まれて、それを実現するだけの熱量が育まれていくのだと思います。 -
上記の課題を踏まえ、それらを解決する為に一緒に何かしませんか?(商材の製造・イベント・事業コラボ)※提案頂いた内容
紙は木から作られているということもあり、親和性は高いと考えています。お互いの課題意識や目指していきたい先をもっと擦り合わせて実現に向けて進めていけたら良いですね。
直接的な話としては、石川県ないし金沢市の間伐材や廃材利用を、製紙メーカーとの取組によって「地域材を使った紙」として利用・流通させるようなことができるのではと考えています。
また、私たちは先ほどもお話した「チョキぺタス図工室」を全国にて出張展開していますし、本社のある日本橋では、周辺の企業さんや飲食店を巻き込んだスタンプラリー形式の「紙の遊園地イベント」の実施も行なっています。チョキぺタスなどのワークショップはもちろん、色んな作家さんやアーティストと一緒に町を盛り上げていくことができます。地域材を活用したチョキぺタスやそこから生まれる地域と連携した町づくりを通して、こどもたちに紙や木のことを知っていただけるきっかけを作っていけたら嬉しいですね。
Cross Eventイベントについて
フルタニランバーでは中庄と協力の元、こどもたちに向けた木材と紙に関するイベントを行います。開催してほしいという行政、団体、企業の皆様、是非お問い合わせください。
中庄株式会社 https://nakasho.com/